マーガリン=食べるプラスチック
マーガリンは何時からこんな悪者扱いされるようになったのでしょう?
マーガリンにはトランス脂肪酸が多く含まれ動脈硬化を引き起こす原因として、食べるプラスチックなどと言われ、身体に害悪を及ぼす化学製品として健康志向の人からのルサンチマン(恨み)を一身に背負わされた感じがあります。
人がどう考えようが自由ですが、バターにもトランス脂肪酸は含まれていますし、近年では製法の改良によりマーガリンのトランス脂肪酸の含有量も大幅にカットする事が出来ています。
以前から食品メーカーは、自主的に食品のトランス脂肪酸削減に取り組んでいました。例えば、今回特にメッセージを出していないJオイルミルズのマーガリン「ラーマ」でも減らしています。現在、10gあたりのトランス脂肪酸は0.1g。これはリニューアルし、2005年の商品の9分の1にしたという明治の商品「コーンソフト」の含有量と同じ値です。
引用:朝日新聞デジタル
まあ、とにかく余り健康的ではないマーガリンですが、食パンブームの牽引者、【乃が美の食パンにはマーガリン】が使われています。
上のような意見も当然あると思いますが、
筆者は長年、パンやお菓子の仕事をしてきましたが、あえてマーガリンを使う事を公言している乃が美という食パン屋さんにプロの矜持(プライド)というものを感じました。
マーガリンを使っていても沢山の支持を得て食パン専門店の代表という地位を確立しているわけですが、
今回は、なぜ乃が美はマーガリンを使うのか?その理由を他の記事には無い深掘り解説してみたいと思います。
【乃が美】の食パン、なぜマーガリンを使っている?
マーガリンというだけで拒否する人もいらっしゃいます。
「まず家の中に入れない。マーガリンは使わず、バターにする。バターが体に悪いと思っている人もいるかもしれませんが、バターにそのような害がないことがわかっています。
引用:FLYDAY
そうなのですか?と色々疑問がありますが、あえてイメージの悪いマーガリンを食パンに入れるには、それなりの理由がないと納得できないですね。
【マーガリン】は食べるプラスチックなどではない?
乃が美はマーガリンの安全面においての主張を以下のように説明しています。
トランス脂肪酸を低減 (0.76g/100g *メーカー計算値)し、バターのトランス脂肪酸(1.7~2.2g/100g *農水HP抜粋)よりも低く設定しています。 当然のことながら植物性なので、コレステロール値は1 mg/ 100g (メーカー計算値)です。バターのコレステロール値は210 mg/100g(*日本乳業協会 HP 抜粋)ですので、コレステロール値は断然低く、体にもやさしいマーガリンです。
引用:乃が美
と、いうことですが、売る側の主張なので、信用するしか根拠がありません。
私の意見ですが、過剰摂取しなければそれほど気にする事ではないのでは?と、いう感じです。
【マーガリン】じゃないと美味しくない
バター100%ではなかなか出せなかった、小麦粉や蜂蜜の素材の風味を極限まで引き出すことが可能となりました。 よって乃が美はこのマーガリンがあったからこそ、初めて唯一無二の「生」食パンを完成させることができたのです。
引用:乃が美
一部抜粋ですが、注目するのはバター100%では出せない味を完成させた、という所でしょう。
実はこれ、企業としてある程度規模のあるベーカリーチェーンにいる優れた製パン技術者にとっては常識の事なのです。
ちょっと専門的になりますが、バターの風味やコクを最大に引き出すには、しっかり焼いて水分を飛ばす必要があります。(クロワッサンやブリオッシュなどしっかり焼き込まれている物)
水分を抜くことで味が凝縮する感じですね。
しかし、乃が美の食パンはしっとりして水分が多いですし、そもそも沢山バターが入っているわけではありません。
では、どうやってバターの風味を出すのかというと、マーガリンの登場となるのです。
【コンパウンドマーガリン】とは?
家庭のパン作りではなかなかお目にかからないと思いますが、プロのパン屋さんではコンパウンドマーガリンというバターとマーガリンの混合油脂を使う事がよくあります。
こちらは大手油脂メーカーから多種多様な製品が発売されており、
クッキーなど焼菓子用、スポンジケーキ用、製パン用、クロワッサンなど折り込み生地用などなど、高級食パンブームの今は食パン用もあるかもしれませんね。
こういった用途に特化したコンパウンドマーガリンを使用することによって、バター100%では出せない非常にバター感のある商品を作り出す事が出来るのです。(汎用性は無い)
そして、それはすでに大多数の消費者にとって満足のいく商品として普及しており(乃が美よりはるか昔から)、バターっぽさを感じる味覚の基準として浸透していると言って過言ではないと思います。
私がブーランジェリーを経営していた時は、コンパウンドを使っていましたが、お客様からバターの香りが良いと言われたものでした。
功罪あると思いますが、
高級食パンのような水分の多いパンにはバターのみ配合するよりこういったコンパウンドマーガリンの使用がバターの風味において有効に作用するのです。
結局、【マーガリン】を使うメリットとは?
大手製パンメーカーやある程度規模のあるベーカリーチェーンがコンパウンドマーガリンを使う理由として、
- バターより安価である(動物性の物より環境負荷が低いらしい)
- バター100%使用より風味や味において特化しやすい
- 安全面においても技術革新によりバターよりトランス脂肪酸、コレステロール値が低く抑える事が可能らしい
- バターとマーガリンのオリジナルブレンドをメーカーに発注することにより独自性のある商品を開発できる(まさに乃が美がやったこと)
以上、これが乃が美にとどまらず、製パンメーカーがマーガリンを使う理由なのです。
まとめ
乃が美のマーガリン使用を肯定する形になりましたが、
乃が美がマーガリンを使う理由は、
- 他にはない独自のパンを作る為
- 安全面においてもバターより優れている為
製パン技術者にとっては当たり前の事だと思いますが、
植え付けられたマーガリンとか身体に悪い、気持ち悪いという感情を払拭するのは選択肢が多い現在では多様性を尊重して、あまり意味のある事ではないとも思います。
思考停止からの脱却を
私が1つ主張する事といえば製パンメーカーや技術者の不断の努力、臥薪嘗胆を無視する事は、たかが菓子やパンのようなものであっても技術革新において停滞と衰退を意味するのではないかと思います。
固定概念が全て悪いとは思いませんが、
ぜひ、マーガリンを使った乃が美の食パンの美味しさを再確認してほしいですね。