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台湾カステラの真実!韓国で炎上した訳と手作りで失敗する理由を解説

今年は台湾カステラなるものが流行っているそうで、メディアでもよく目にする機会がよくありますね。

日本のカステラと違いフワフワでありながらもちもちした食感が特徴のカステラです。

実はこの台湾カステラ、数年前に韓国で流行っていましたが、良い材料を使って作っていると宣伝しておきながら、乳化剤や液卵を使用していたことがメディアで発覚して、非難、炎上したことがあります。

もちろん、真実を隠し嘘をついて販売していたことが一番の問題ですが、乳化剤や、液卵って何がダメなのでしょうか?

乳化剤のような添加物には悪いイメージがありますが、真実はどうなのでしょうか。

そこで、今回は現役パティシエの私が【台湾カステラ】など、お菓子に使われる乳化剤液卵について解説したいと思います。

あと、なかなか上手に焼けないようで、その理由(真実)も解説します。

【台湾カステラの真実?】乳化剤、液卵とは?

画像:LuLulu♪KoreanLife

正直、乳化剤や液卵はプロの現場では普通に使われてます。

普通に使われている材料、それが台湾カステラの真実です。

特に上の写真のようなフワフワの【台湾カステラ】を上手に焼くのは乳化剤なしではかなり難しいです。しかし、ブカブカのスポンジケーキでもちもちしてるとは思えないですね、、

乳化剤の特徴

スポンジ生地に使われる乳化剤で、代表的なのはグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖酸エステルがあります。

化学物質って感じで身体に悪そうですが、?

【台湾カステラ】に使った場合の特徴としては、

  1. 気泡を安定させる(しぼみにくい)
  2. しっとりが長持ちする
  3. 焼き上がりにボリュームがでる

いいことばかりなんですね、

乳化剤を使った方が、あまり技術が無くても上手に焼けますし、商品の出来上がりにブレが少なく、安定供給できます。

だから熟練した技術者しかいないわけではないプロの現場で使う訳ですが、ちょっとガッカリでしょうか?

乳化剤(添加物)は身体に害なのか?

画像:tonton

乳化剤など添加物については様々なプロの方や素人まで、危険性や安全性について大量に議論されています。

危険と言われれば危険と思うし、

安全と言われれば安全な気もします。

安全や危険が証明されていると言っても、それが捏造かもしれないという猜疑心は拡がるばかりです。

お菓子に使われる添加物(乳化剤)だけでもかなりの種類があり、1つ1つ紹介するのは切りがなく困難だと思いました。

今回は添加物に対する私の考えをまとめてみました。

  • 乳化剤など添加物と呼ばれる物は身体に良くないです。ただし、オーガニックとか天然とか言われてる物も何もかも、食べ過ぎれば毒です。添加物で無くても、添加物でも、人の体質よって過剰に反応する物質やそうでない物もあり、添加物が身体に悪い元凶であると一元化出来ない問題だと思います。昔の食べ物は添加物が入っておらず、健康的だったという話もありますが、添加物だけに着目することは、個人的には懐疑的であります。 1つ確実に言えることは、過剰に食べる、同じ物を食べ続けることは避けたほうが良いということで、添加物が入っていないにこしたことはないが、添加物についてアレルギーのように過剰反応することは現代社会において"生きづらさ"を覚悟することになると思います。

液卵とは?

こちらは添加物でも何でもなく、文字通り卵の液です。

業務用として広く流通しており、正にプロ御用達って感じです。

個人のパティスリーではなく、チェーン展開しているような会社では100%使用されています。

メリットとしては、

  1. 卵を割る必要がない(殻など異物混入がない、衛生的)
  2. 生卵に比べて鮮度や性質が均一(生卵を使う場合、パティシエが最も頭を悩ます問題)
  3. 生卵より安価である。
  4. 凍結されて販売されていることがデフォルトであり、生卵のように鮮度を気にした在庫管理の業務が軽減できる。

デメリットは、新鮮卵ではなく、不味そうって感じでしょうか?

韓国の【台湾カステラ】はこの最大のデメリットについて真実を隠し嘘をついてしまったんですね。

嘘はダメですが、業務用として、お菓子に限らず色々な製品に使用されており、どこかで常に口にしているような物なんですがね。

液卵の使用を批判されると何となくモヤっとしますが、嘘はダメです、真実を語り正直にいきましょう。

【台湾カステラ】を失敗しない作り方を解説!

せっかくなので、添加物、液卵を使わない【台湾カステラ】の作り方というかロジックを解説します。

失敗しまくりで、難しいです

台湾カステラの特徴はフワフワでもちっとした食感です。

もちもちとフワフワという矛盾した状態を1つの菓子に共存させるハイブリッドな技が必要なんですが、

それ故に、すぐしぼんで失敗したというレシピブログが沢山ありますね。

ネットに書いてあるレシピの半数は嘘だと思い知りました。

明らかに生地が縮んで焼き上がってるのに、いかにも成功したみたいにレシピを公開するの、ホントやめてくれませんかねプンプン。割れちゃったところを後ろ側に隠して撮ってる動画もあったし。

              ハミングバード

↑こちらの方はお怒りですね、、【台湾カステラ】への情熱を感じます。。

もちもちにするには、いわゆる湯種をいれます

もちもち食感を作るのに台湾カステラではオーブンで焼く前に小麦粉に水分を加え、あらかじめ火を通します。(別にタピオカ粉や米粉を入れたほうが楽なような気がしますが、、)

小麦粉に火を通すとどうなるのかというと、すいとんのような餅みたいな物が出来ます。(小麦粉ですが気泡を蓄える力が無くなります)

このすいとんのような餅を生地に入れるので、文字通りもちもちになるんですね。(湯種というと食パンな感じですが同じ理屈です。勘違いしてる人が多いようですが、フワフワにする為ではなく、全く逆の、密にしてもちもちさせる為です)

これを小麦粉の糊化(α化)などと偉そうに言いますが、60度の高温を必要とし、小麦粉全体を糊化させるには、"生煮え"にならないような配慮が必要です。

ここでまず、考え方にも作業的にもつまずいている人が多いようです。(ブログなど見た感想ですが、、)

フワフワにするには、限界の割合があります

もちもちは一旦置いといて、フワフワについて解説します。

これはもう、卵、砂糖、小麦粉、水分の割合でスポンジ生地として成立する限界の配合があります。(シフォンケーキはまた別の考えになります)

どう考えても卵に対して砂糖、小麦粉の量が少ない配合は、焼きたてはフワフワでボリュームが有りますが、冷めると必ずしぼみます。(焼きたてを食べる前提のスフレはそれでいいです)

なので、すぐしぼんで失敗したという人は、そもそもスフレであるという認識じゃないという事になりますね。

作る前に、冷めてもフワフワさせたいか、暖かいものをすぐ食べるのかでレシピを判断する必要があります。(そんなものは分かるわけないと怒られそうですが)

新鮮卵という落とし穴

あまり、専門的になると難しいですが、鮮度の良い卵は強い気泡を作る作用が高く、ボリュームのある生地を作ることができます。

しかし、ボリュームが出過ぎた生地は、その反作用で非常にしぼみ易いというデメリットがあります。

これはダックワーズのような、いわゆるメレンゲ生地において顕著に現れる失敗例ですが、プロのパティシエはそれを防ぐために卵を泡立ち難い水様化という作業をほどこします。(乳化剤などの添加物に頼れば楽ですが、、)

水様化とは新鮮な張りのある卵とは真逆の、鮮度の悪いシャバシャバな状態を指しますが、鮮度の良い卵を直ぐにシャバシャバにする方法は幾つか知られています。

多くの台湾カステラのレシピを見てみると、卵を卵黄と卵白に別けて、メレンゲを作っていますが、水様化をしないレシピでは、よりしぼみ易く失敗する可能性が高いことは言うまでもありません。(液卵を使う場合は水様化済みで問題はないです)

もちもち、フワフワ、どの割合でハイブリッドさせるかがカギ

https://twitter.com/chikuwaoisii/status/1364054578472259584?s=19

台湾カステラの失敗で一番多いのは、やはり、しぼんでしまうという事なんだと思われます。

もちもちの割合が多いほど、焼きたてはフワフワをキープしますが、しばらくするとしぼんで餅のようになります。(当たり前のことですね)

もちもちの割合が少なければ、フワフワのただのスポンジケーキですね。

もちもちすることでミスリードさせるレシピが多いような気がします。

【台湾カステラ】つくってみた

そこで、もちもち感は有りながらも、冷めてもしぼみ難い、手土産に出来るようなカステラを前提として考えます。

もちろん乳化剤液卵はつかいません。

  1. 卵に100に対して砂糖、小麦粉は50以下にはしない
  2. いわゆる湯種は小麦粉全体の30%を限度とする
  3. 卵黄、卵白を別ける別立て方法をやめ、全卵で作る共立て方式にする
  4. 水、ミルク、豆乳など液体を加える場合は卵の20%を限度にする
  5. 液状の油脂、バターなどを加える場合は卵の30%を限度とする

以上の範囲内であれば、カステラとして成立します。(増減してもいいですが、不安定さは増すと思いますよ)

私も作ってみますね。

もちもちフワフワ、失敗するはずのない【台湾カステラ】のレシピ(ただし、経験者向け)

  • 卵    250グラム(Mサイズ5個、安いのでいい)
  • 砂糖   125グラム(人工甘味料でなければ何でもOK)
  • 薄力粉  125グラム(湯種に使う38グラムを別にしておく、ふるってね)
  • 豆乳   50グラム(たまたまあったので、牛乳でもいいです)
  • サラダ油 50グラム(普通に家で使うもの。湯種用に20別にしておく)

①豆乳とサラダ油を鍋にいれて沸騰させる              

②沸騰したら火を外し、湯種の粉を全部入れてヘラでしっかり混ぜる(沸騰させないと小麦がしっかり糊化しません) 

これがすいとんみたいな餅

すいとんのような餅が出来たら、砂糖も混ぜ、ダマにならないように卵をちょっとずつ加えて餅、砂糖、卵の液を作る

餅砂糖卵液をかき混ぜながら湯煎にかけて、ちょっと熱いお風呂くらいの温度(50度弱)にする(水様化)

卵の腰が無くなってシャバシャバです

⑤ハンドミキサーで泡立てる。残りの粉、油を加えたら完成。(しっかり混ぜて、泡を切りましょう)

ハンドミキサーでは超時間かかって大変、

⑥オーブンで湯煎焼きにする(温度が高すぎると表面が割れたり焦げるので気をつける)

焼き立て
30分後、
断面

思ったより、密な仕上がりになりました。もっとフワフワにするには、餅の配合をもう少し減らしたほうが良いかもです。(市販の台湾カステラを見る限り餅を入れてるのか疑問です)

まとめ

【台湾カステラ】の真実とは、韓国の業者の誇大広告が嘘だとバレたことによる炎上騒ぎでした。

しかし、作っていた【台湾カステラ】は業界的には、わりとノーマルなものだったんだと思われます。

店舗が沢山あり、大人気だったようですから美味しかったのでしょう、真実を知るまでは。

ついでのつもりで【台湾カステラ】の作り方を考察しましたが、初心者の方にはいきなり理解できない内容だったかもしれません。

今、日本では【台湾カステラ】がブームのようですが、これをきっかけにスイーツに関わる色々な問題(添加物や原材料表示、効率化による技術力の排除など)を考える機会が増えればいいなと思いました。

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藤原 敏夫

1974年生まれ。ポール・ボキューズ、ノブTOKYOで製菓製パン、ペストリーを学び、日本人唯一MOF取得者の美ノ谷靖夫氏に師事。独立してベッカーフジワラを15年経営して廃業。現在はブーランジェリー職人として勤務しながら、経験を活かした記事を執筆中。

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